M-1グランプリ2007・決勝感想


そんなに他の人の感想を多く見た訳じゃないけど、見た中ではike-chinさんの感想が一番面白かった。(id:ike-chin:20071223:p3) ハッとさせられる記述が多々あり。ダイアンのところに書いた「他のネタ」については、そちらを参照。

笑い飯

準決勝では文句無しのウケと聞いていたので期待していたんだけど、不発。「へし折る」の下りくらいから、正直何やってるのかよくわからなかった。2人でわちゃわちゃしてたという印象しか無い。


そもそも一番目にやるタイプのネタじゃないですよね、これは。2年前のトップバッターのときは、その辺りを意識したネタをやっていたと思うんだけど、今年はそういうタイプのネタのストックが無かったのだろうか。残念。

POISON GIRL BAND

島根と鳥取。ポイズンらしいネタで個人的には好きだし、序盤緊張が見えたものの本人たちも手応えがあったはず。それだけに今回の結果はショックだろうなあ…個人的にはかなり面白かった。正直、点数がちょっと低すぎるなと思った。笑い飯を基準点と考えたときに、10点差が付くなんて有り得ないと思うんだがなあ。あ、ただ目と耳の下りじゃなくて、ポケットの下りをオチに持ってきた方が良かったとは思った。


松本が言うほどネタのチョイスミスという気はしなかった。準決勝の「ガッツポーズ」よりはいい。ただ、去年の準決勝でやった「引っ越し」ネタを何故やらない、という素直な疑問もある。去年、最悪なコンディションの中で決勝に進めたのはあのネタが準決勝でがっちりハマったからなんだよね?勿論準決勝の舞台と決勝戦は別モノなんだけど、現時点ではあのネタが一番勝負できるネタなんじゃないかな。今年のダイノジロックフェスで見たんだけど(id:nmnl_nmnl:20070204:DRF2)ポイズンらしいトリップ感があって、確かにいいネタだったので強いて言えばこっちをやってほしかった。

ザブングル

ここが決勝に上がった理由は「今まではコント漫才だったけど、今年はしゃべくりにシフトチェンジして、なおかつグレードが下がってなかった」ということだと思うんだけど、決勝の一発勝負ではそんなこと見えてこないからなあ。舞台では滑り知らずのフレーズがちょいちょいスルーされて、決勝戦の厳しさを実感。上沼恵美子今田耕司のコメントが面白すぎた。

千鳥

このネタ、初見なんだけど「あれ、(このネタって)普段はもっとウケるんじゃねーの?」と思った。たぶん舞台でやれば細かいくすぐりのような部分もドカドカウケるんだろうけど、そういう細かいところでのトーンダウンが痛かった。賛否両論の最後の部分は、確かに期待外れだったかもしれない。「幕末ごっこ」のような、最後に合点がいく感じが無かったのは残念。でもここもポイズンと同様に「点数低いなあ」と思った。もうちょっと高くてもいいのに。


それにしても紳助は「点数の付け方」の解説ばっかりだなあ。たまには真っ正面からネタの評論をしろと言いたい。

トータルテンボス

相変わらず大村のボケがジャブ程度の軽い連打なのが最初は気になった。しかしそこに被せる藤田のツッコミがかなりの力技。強引に持っていったね。去年まではその辺り(大村のボケ、藤田のツッコミ、どちらに重きを置くのか)が中途半端だった気がするけど、今年は自信いっぱいに藤田がフルスイング。過去2回の決勝戦では実力を出し切れていなかったコンビなので、この活躍ぶりは見ていて嬉しいものがあったなあ。


目立ったミスも無く、ここまででは文句無しの一位。ただ、2005年のブラマヨ、2006年のチュートリアルのような爆発は起きなかった。

キングコング

今更M-1に出る必要は無いという声、ネット上でのアンチの多さ、西野のブログでのハードルの上げ方、そんな厳しいスタート地点から、ここまで場を盛り上げられるのはやはり実力と努力の証。参戦を決めた時点である程度決勝までのレールは敷かれていたんだろうけど、それを(少なくとも予選の漫才を見た者には)誰にも文句を言わせない漫才で、堂々と足を踏み外すこと無くここまで進んできて、なおかつ決勝でもきっちり結果を出すというのは本当に凄い。素直にカッコいいと言える。でも個人的にはトータルよりちょっと下。


ネタに面白みが無い、と言われるけど「ちょっと今顔出てこないんですけど」とか「ポイントカード、1円ごとに1つ」の下りはクリーンヒット。あと、よく言われる「舞台は広く使う」っていうのをちゃんと守っているんだよね。凄く真面目だと思う。

ハリセンボン

ここが決勝に上がったのは「重かった準決勝の空気を一変したこと」に対する御褒美のようなものだと思っていたので、決勝戦でどうなるかが一番予想が出来なかったコンビ。でも、意外に準決勝のときと同じうねりが出せていたのかな、と思った。それって舞台経験もあるけど、テレビ経験値の高さもあるんだろう。ここはタレント力の強さが出たなあ。カウスの講評を聞いている春菜の顔も面白すぎる。


ネタ的には、もう少しインパクトが大きいボケを見たかった。ネタ自体、はるかの持っている発想力が生かされていなかったと思う。

ダイアン

オンバトで見た「スカウト」ネタ。面白かったんだけど、これもポイズン・千鳥と同じく点数低くねえ?と思った。そして、このネタに対して「間を詰めてほしい」という意見はどうなんだろう。あれは必要な間じゃないのかな。年々、審査基準が「勢い重視、手数重視」になっているような。そりゃ髭男爵も芸風変えるわ。以上余談。


「壊れたハンガー」が本来の形で活きるという他のネタを見てみたくなった。

サンドウィッチマン

敗者復活でやった「街頭アンケート」ネタ。ツカミに何を持ってくるか気になったのだが、ツカミ無しでそのまま本ネタに。その結果、火が付くのがいつもより若干遅かった(普段の舞台であれば、このネタは一発目のボケから一気にウケるはず)のでマズいか?と思ったが、途中からは結果的には何とトップ合格。や、確かに面白かったけど、ここまでのロースコアな展開からするとちょっと意外。


何となく思ったのは、ここまで目立った爆発を起こしたコンビが無く「爆発したい!」という会場・審査員の期待が集まって、それに応えた形なのかなと。ハードルが高くなっていたのか低くなっていたのか、よくわからない状態。変な話、ストレートインしていたらこの結果が出せたか?というとそうではないと思う。前8組がこの順番で、この出来で、9組目に出てきたからこそ出た結果じゃないかな。って、当たり前のことなんですけど。そして勿論、最初に書いたような期待に応えたこと自体がまず凄いんだけどね。


たらればは意味が無いとわかりつつも、笑い飯が一番目じゃなかったら?ポイズンの出番が後半だったら?トータルがもう一段大きなうねりを起こしていれば?色々考えた。

トータルテンボス

出だしは一本目のネタのコピーのような類似ネタで「大丈夫か?」と思ったが、後半藤田が乗っかる辺りからの裏切りは心地よかった。あと「緯度が高い」の下りは超ツボ。無限ループになるオチは無理やりだった気がするが、「丁度背中いらねーと思ったんだよ」というフレーズで拍手が起きた時には、これは優勝できるんじゃねーかと思った。

キングコング

ike-chinさんが書いているように2本目の勝負ネタが無いであろうことは予想できたので、このネタについてとやかく書いてもしょうがない。しっかし楽しそうにやってたね。この日見た漫才の中では、ダントツに楽しそうだったわ。このネタのときの西野が。

サンドウィッチマン

今田が押していた「結婚式のスピーチ」ではなく「宅配ピザ」。結構古いネタな気がするけど、やり慣れたネタを選んだんだろうか。



最終決戦は、個人的にはトータルテンボス。過去2年のようなミスも無く、一本目のネタとは違うアプローチも見せた。M-1らしい漫才だった。それでもサンドウィッチマンの勢いに、僅かに追いつけなかった。残念だ。



サンドウィッチマンが、初の敗者復活戦からの優勝。巨人が言っていた「なぜ決勝に残れなかったのか?」という言葉含め、準決勝の審査基準と決勝の審査基準の剥離が浮き彫りになった形。でも、そこで予選の審査員に文句を言う気にはならない。今回の8組の選出にはそれぞれきちんとした理由があったと思う。「じゃあどこを落としてサンドウィッチマンを上げれば良かったのか?」と聞かれたら誰も答えられないでしょう(結果がわかってる今だったらポイズンだの千鳥だの名前を挙げられるのかもしれないが)。少なくとも予選を生で見てきた人なら、許せるレベルの選出だと思うよ。