東京ダイナマイト祭り@日比谷野外音楽堂


前説の末高斗夢はいつものように滑り倒し、拍手の練習が全く出来ず。日本一コストパフォーマンスの悪い前説である。シークレットゲストの長州小力による国家斉唱(まさか一週間のあいだに2回も芸人の国家斉唱に立ち会うとは思いませんでした)の後に、個人的に注目ポイントだったスピードワゴン。やはり「笑魂伝承」の時と同じように有ネタをミックスしたものだった。前半ちょっと構成が散漫?(学生時代、心理テスト、マジカルバナナ、他にもあった気がする)後半は「探偵物語」。やっぱりこのネタが一番安定しているか、なかなかの盛り上がり。しかし、この広い会場で実質のトップバッターということもあってちょっと苦戦しているようにも見えた。ちなみに井戸田の声は相変わらず通りが良く、つーか耳に痛く、霞ヶ関で残業しているサラリーマンにはちょっと迷惑だったかもしれない。


猫ひろしジジ・ぶぅというフリークスな見世物に続いて、ダイノジ。これが良かった。「人気者の陰でコソッと爆笑とるのががうまい我々」という大谷の言葉は、あながち嘘じゃないようだ。ロキノン厨丸出しの選曲でDJイベントを主催したり、始めて2日でおおちがエアギター日本一に輝いたり、最近の活動の無節操っぷりが逆に「漫才をすることの楽しさ」を際立たせているのか、いい意味で漫才が無軌道。序盤の通販番組の下りで、客の盛り上がりが一桁跳ね上がる。その一方で「あ、そこ掘り下げすぎじゃね?」と言いたくなる場面もあり、その辺の加減を知らない(もしくは無視して楽しんでる)感じは相変わらずだったりする。でも今更「前足で叩くな」なんて聞き飽きたフレーズで爆笑させられるとは思わなかった。だって「その前足でエアギター日本一になったのか!」とか思ったら。日本のエアギターシーンは、ポッと出の豚に制覇されたのな。


ダイノジで最初のピークを迎えた客が、ぞろぞろと席を立ちトイレに行ったり酒を買いに行く中、COWCOWの出番。この日一番客弄りが発生した時間で、きっちりそれが盛り上がっていた辺りはさすがである。あとネタはやっぱりいつものでした。もうそれでいいです、COWCOWは。毎回笑ってるから、俺。


2丁拳銃ますだおかだを挟んで、いよいよヘッドライナーの東京ダイナマイト。始まって5分くらいで、明らかに今までの東京ダイナマイトの漫才と違うということに気づく。単純に漫才のスキルが圧倒的にレベルアップしている。今までの東京ダイナマイトの漫才は、やっぱりどこか「コント師のやる漫才」であって、明らかに他とタイミングをずらしたノリが逆に面白かったんだけど、今夏のツアーで完全に「漫才師としての漫才」を手に入れたんじゃないだろうか。同じネタをやったとしても、毎回全然違う言葉・ノリが出ているんだろうなあと思わされるグルーヴ感。ちょっと前に書いた「会話のテンポがある漫才」、正にそれだった。


「この夏日本一たくさん漫才をやったのは間違いなくオレ等。」というのは大袈裟な言葉ではない。お笑いでも音楽でも、やっぱりツアーを回ると劇的に変わる。特に松田のボケが自由になりすぎ。ハチミツ二郎のツッコミに対する「チャプチャプうるせえ!」という全くもって意味不明の切り替えしがどんどん爆笑に繋がっていくわ、新ネタ?の「歯医者」のネタではハチミツ二郎をいつも以上に振り回しまくるわ、とにかく最高。


去年の野音は「単独ライブなのにどんどん笑いの量が少なくなっていく」というなかなか不思議なライブだった。「有ネタばっかりで新ネタは僅か5秒」「ハチミツ二郎の腰の具合が悪かった」などの理由は思い当たるが、今年のライブが見違えるように素晴らしかったのはそれらの要因をクリアしたからというだけではなく(繰り返しになるが)とにかく圧倒的なスキルアップによるものだろう。ちなみに去年と比べて、東京ダイナマイトの持ち時間は短くなり約半分ほどの30分足らずであったが、客は倍増、笑いの量は4倍増。ネタは新ネタと有ネタが半々ほど、しかし有ネタは有ネタで去年の野音と比べてみても出来が全然違った。初っ端の歌ネタなんて、会場にいた東京ダイナマイトファンなら殆どの人が見たことがあるはずなのに、全く問題無しの盛り上がりだった。


印象的だったのは最後に披露された「効果は未知数」の盛り上がりっぷり。それこそ最近のTV出演は殆どアレで多少食傷気味だったのだが、実際生でやられるとこちらも「待ってました!」と盛り上がらざるを得ない。「ポケモンじゃないんだぜ?」「星のカービィじゃないんだぜ?」で割れんばかりの拍手と爆笑。何だこれ。野音という会場のせいもあってか、最後の最後に大ヒットシングルで諸手を挙げて大合唱した気分だ。つーか、大ヒットシングルが「エアウォーカーを使った漫才」ってのもいかがなものかと思う。


最後は「今年もM-1に出る」「俺らが出なきゃ面白くないだろ」「優勝したら、今ここにいるやつら全員バーミヤンでおごってやる!」などの名言を吐き(最後の一つはミッシェルガンエレファント・チバユウスケの「床が抜けたら俺らが弁償してやる!」に並ぶかと思った、マジで)、ザ・ブルーハーツの「1000のバイオリン」を熱唱。「ミサイルほどのペンを片手に面白いことをたくさんしたい」のフレーズに迂闊にもグッとくる。去年の尾崎(もちろん豊だ、紀世彦ではない)よりも個人的にツボに入るというのもあったが、何だか泣きそうになってしまった。そして去年同様、鉄骨に上るパフォーマンスとビールでの乾杯。何かもう、カッコ良過ぎて参った。僕は涙をギリギリでこらえながら、東京ダイナマイトの漫才フェスティバルは大成功で幕を閉じたのであった。


…と思いきや、これで終わらない。再登場したのは東京ダイナマイトの2人と、なぜかダイノジおおち。日本一に輝いたエアギターのパフォーマンスを見せてくれるのかと期待するも、始まったのはぐっだぐだのショートコント。そしておおち独りの一発ギャグで締め。脱力。涙が引き潮のごとく乾いていくのがわかりました。エアギターならぬエアクライ。去年同様、救急車が来てたのなら「早くそこの豚、引き取ってー!」と言いたかった。つーか、それはどっちかっつうと救急車というよりドナドナだと思った。