POISON GIRL BAND単独ライブ「ちゃんこ番」@ルミネtheよしもと

※タイトルは適当です。
漫才:しりとり
コント:相撲のチケット
コント:外人と取引
コント:グローブ
コント:布団干し
コント:蝉取り
漫才:ファッション
相撲


見ての通り、コント中心。M-1に向けて漫才中心で…なんてことをしないのがポイズンらしいと言えばらしいのか。


序盤のコントは展開が読めるもの、もしくはオチ一発勝負のものが多く個人的には退屈だった。うっかり居眠りするくらいに。(特に「グローブ」は予想通りすぎてガックリした)


そんな中、強烈だったのが「布団干し」。大きなベランダのセットが出てきて布団を叩く阿部。「お、騒音おばさんか?」と思いきや、全く違う。隣のベランダに出てきた吉田と世間話。会話の内容は「町内会の会長さんがゴミの分別ができてないといい、皆のゴミを漁っている。そんな風には見えないのに。裏表があるのねえ。」という内容。


ベランダでこの会話が2回。吉田が引っ込んで、阿部の家に電話がかかってくる。電話を取る阿部(ステージから消える)。吉田から。今度は電話を通じて、また同じ会話が。ベランダに戻る2人。何事も無かったかのように、同じ会話が始まる。吉田が引っ込む。阿部の家のインターホンが鳴る。出てみると吉田(この時もステージから消えている)。また同じ会話が始まる。ベランダに戻る2人。以下繰り返し。


これが 約30分に渡って、繰り広げられた。


一言で言うと、狂ってる。完全に頭がおかしいと思った。6回目辺りで、ふと横を見たら隣の女性が爆睡していた。後ろからは「これ、いつまでやるの?」という会話が聞こえてきた。少し離れた席では、この空間の異常さに気づいた子供がむずがり始めた。何だこれは。普通の「単独ライブ」では絶対に有り得ない空気。どんどん笑いの量が減っていく。むしろ僅かに残っている笑い声が異質だった。そして席を立って出口に向かっていく人が数名。ネタのようだが本当だ。


僕が数えた限りこのループは計13回続いたのだが、恐らくポイズンの2人は「13回でやめよう」なんて決めていなかったはずだ。たぶん「笑いが全く無くなるまで続けよう」と思っていたのではないか。(残念ながら子供が騒ぎ出してしまったので、それは無理だった。)


誰がどう考えても、このコントでは爆笑は生まれない。途中、8回目あたりで阿部が「パート始まっちゃってるわね〜」と言った瞬間はとんでもない爆笑が生まれていたが、それが狙いだった訳ではないはずだ。だったら、このコントは何が狙いだったのか。笑いが生まれないことをわかっているのに、何故30分もこのコントを続けたのか。それは「見ている人たちの脳をグルグルと掻き回すため」としか思えない。時間の感覚が無くなって、弛緩しきった空気に身を委ねながら、「これはもう笑わなくてもいいんだ」と思いながらヘラヘラと舞台を見ている間、僕は物凄く気持ちが良かった。ついでに言えば、30分もあったのに阿部の小さなボケ「布団叩きの使い方が間違っている」を拾わなかったのも凄かった。何のためにボケてたんだ、あれは。気持ち悪いだけじゃないか。


恐らくこんな文章では、このコントの異常さは半分も伝わらない。万が一ファンダンゴTVでフルに放送されたとしても、あの場の空気は伝わらない。こんなにも「生で体験できて良かった」と思えたコントは他に無い。


ただ、「これをもう1回見たいか?」と聞かれたら「せっかくですが御遠慮しておきます」と答えますけど。あんな異常な空間、一生で一度味わえばもう十分だ。